はじめまして、鶴革工房革職人の鶴川です。
2010年にサラリーマンをしながら独学でレザークラフトを開始。
その後、4年目頃から本格的に収入を得られるようになり現在に至ります。
最近、私は革職人deteさんが書き下ろした出版物3冊を読みました。
その内容がとにかく素晴らしくて、これまで自分が抱えてきた不安や葛藤が全て言語化されていました。
そこで今回は、過去の自分を振り返りながら、その本で得た気づきと今後の決意とお知らせを書かせて頂きます。
レザークラフトを副業にして収入を得たいと思っている方や軌道に乗り始めた人に少しでも参考にしてもらえたら幸いです。
deteさんの本はレザクラ初心者はもちろん、私のような副業革職人をしている人にもとても有益な内容ばかりでおすすめです。
オーダーメイド中心で活動することのメリットとデメリット
よし!そろそろ知らない人からの問い合わせも増えてきたし、本格的にオーダーメイド専門でやってこうかな。
あのな、お前はこれから数年後にハンドメイドアプリや手軽なネットショップの波に乗り遅れてオーダーメイドだけをやってきたことを後悔するんだよ。
私は当時(2014年~2017年)facebookやヤフオク、ブログ経由で毎月の様にオーダーを頂き、その対応に追われてました。
年間売上は平均100万円前後、手元に残るお金は月4~5万円ありました。
サラリーマンのお小遣いにしてみたら上出来ですよね。
その時の私は毎朝3時に起床、仕事に行く前の2~3時間を使いながら毎日のように製品作りに没頭していました。
途切れない注文に安心しきっていたのも事実です。
少し、オーダーメイドのメリットをあげてみます。
- 革の在庫を抱えるリスクがない
- 依頼主様に喜ばれる
- 作るたびに新しい発見がある
- 金額を決められる
基本的に注文内容が決まってから革材料の発注をかけるので不良在庫を抱えるリスクがないのは最大のメリット。
メールでも対面でも、革が好きな人との打ち合わせはとても幸せな時間でした。
そして納品をして喜ばれることは、お金には代えられないほど嬉しい瞬間です。
では一方でデメリットはというと
- 見積金額よりもコストがかかってしまうこともある
- 型紙ばかりたまってしまい捨てられない
- 技術に偏りが出来てしまう
- 自分の作風に統一感が持てなくなる
メリットは解説するまでもないので、次の項目でデメリットについて少し抜粋して掘り下げたいと思います。
技術的な課題、技術の偏り
技術的な課題とは、ひとたびオーダーメイドを受けてしまうと、作りながら自分の課題にぶつかる時もあること。
打合せの段階で「それは出来ません」と断ることもありますし、逆に「こんな形なら出来ますよ」と話を持っていくこともありました。
どんな職人さんもそれぞれ自分の作風に見合った得意分野はあるとは思います。
でもそれは自分の作風が決まったうえでオーダーメイドをするのと、私のようにフリースタイルで初めてしまうのとでは5年後10年後に到達する場所が違うと言うことです。
つまり、副業でオーダーメイドに追われると自分の不得意分野のスキルを磨くのがおざなりになってしまうのです。
そもそも副業それ自体が本業や家族サービス以外のスキマ時間を使ってやることなので、不得意分野の技術を磨くのは後回しになりがち。
それこそ試作サンプルを作るのが練習のような状態でした。
お客様の作ってほしい物を作れる技術はあったとしても、それは自分じゃなくても作れるんじゃないか?と、ここ数か月は悩む日々を過ごしていました。
見積金額と利益問題
次に見積金額ですが、オーダーメイドだと既製品の価格より高くなるのは当然かと思います。
ゼロからそのお客様のためだけのアイテムを作るわけですからね。
ただそこでも、この金額設定に関しては私個人としてお金に対する罪悪感やマインドブロックがあったことに後々気付きました。
見積もり金額が高くすればするほど怖くなる、それは自分の技術に自信のない現れだったのでしょう。
だから、ついちょうど良い金額設定にしてしまい、時間とコストに見合わない対価を得ていました。
つまり本当の意味での利益を怖くて受け取れなかった。
それもそのはず、目的がサラリーマンのお小遣い稼ぎだったから。
お小遣い稼ぎが目的だとお小遣い稼ぎ程度のレベルで止まってしまいます。
でも今では、利益とは次のお客様のために使うお金であり、自身のモチベーションに繋げるために投資するお金だと思えるようになりました。
革職人(革作家)としての作風や個性が出せなくなる?
これもあくまでも私の場合です。
私がレザークラフトを始めたのは二人目の子どもが生まれてお小遣いを減らされたことがきっかけでした。
当時、オーダーメイド中心にやってこれたのは、まだハンドメイド作家が今ほどネット上に溢れていなかったから。
facebookも広告をうたなくても勝手に宣伝をしてくれた良い時代でした。
ただ、この時にオーダーメイドは受け付けずにさらに技術を磨き自分だけの作品を育てる方向にシフトしていれば、今はもっと違う場所にいたかもしれません。
実は4年前にもこの問題に気づいていて、一度だけオーダーメイドを止めたことがありました。
ですが、固定ファンが離れていってしまうのでは?と言う恐怖に耐えきれず結局私は2か月ほどでオーダーメイドを再開することに。
今なら分かります、作品を育てることには時間がかかることを。
そして、なぜ私がdeteさんの本を読んで過去の自分に対してこの記事を書いているかというと、今も副業革職人には変わりはないですが、一つだけ変わっていることがあります。
それは、お小遣いを稼ぐためじゃなくて、生活費を稼がないといけない状態だということ。
私は昨年18年勤めていた会社を退職して3ヶ月間の失業後再就職をしました。
再就職先は私にとっては天職のような職種なのですが、前職から比べたら年収で約100万円減しています。
その内容はこちらに↓
つまり、お小遣いではなく生活費を稼ぐことを目的にしないと今のままではヤバい!というわけです。
今までと同じやり方をしていたら、今までと同じ稼ぎにしかならない。
当然のことですよね。
こちらの記事が全てのレザークラフターを目指す人たちに当てはまるとは思っておりません。
オーダーメイド専門でやること自体を否定しているわけでもありません。
もう一度おさらいすると、私の場合は副業レザークラフト の中身がオーダーメイド中心になってしまったことにより、時代の流れに乗り遅れて自身のブランドを上手く育てられなかったと言う話です。
ただこれまで積み上げてきた知識や経験は無駄になったとは思っていません。
たくさんのお客様と知り合えましたし、多い人だと製作に取り掛かるまでに50回以上メールで打ち合わせをしたりしました。店舗を持たない分、出来るだけ顔が見えるようなやり取りを心がけてきました。ヤフオクでは目標にしていた全国制覇も出来ました。
革職人としてお金を稼ぐ動機は人それぞれ違う
deteさんの本を3冊読んで私は『その他大勢の中の一人』になってしまっていたんだなという事に気づけました。
自虐で言っている訳ではありません。おかげで今まで目を背けていた自分の立ち位置をしっかりと直視することができました。そしてこれからはSNSを今まで以上に駆使しながら戦略的に挑んで自分の作品を届ける努力をして行きたいと決意しています。
今は様々なノウハウ系の動画や商材が巷に溢れています、これからレザークラフトを始める人は本当に恵まれていると思うし、その分ハードルが下がって激戦地帯なのかも知れません。
オーダーメイドは割に合わない、そういう理由から撤退する革職人さんの気持ちも分かります。
それでも、最前線でオーダーメイド専門で魅力的な作品を作っている凄腕の革職人がいるのも知っています。ただただ尊敬しかありません。
むしろ10年前に戻れるのなら弟子入りして修行してから革職人になりたかった。
ちなみに2年前の10周年(2020年)の時にこんなことを書いてました。↓
これからレザークラフトを始める皆さんの活躍を応援しています。
ここまで読んでくださった私と同じ副業革職人さんにも感謝いたします。
私も頑張ります!
【お客様へ大切なお知らせ】
鶴革工房12年目を迎えた今、ゼロから再出発して5年後10年後を見据えたブランド作りをすることにしました。
今月末(2022年6月)を持ちまして、7年近く利用してきたヤフオクショップは休止し、BASEとminneでの販売に注力していきたいと思います。
これまでご利用頂いたお客様には心から感謝申し上げます。誠にありがとうございました。
合わせてフルオーダーメイドの受注も終了させて頂きます。
引き続きBASEやminne、インスタなどでフォローして頂けたらとても励みになります。
何卒よろしくお願い申し上げます。
最後までお読みいただきありがとうございました。